「食事を促した」と書いたはいいものの、何をどう促したのか、自分でも思い出せなくなること、ありませんか。
介護記録の言い換えというと、「不穏」「暴言」のように利用者さんの様子を決めつけてしまう言葉がまず思い浮かびます。ただ、実際に記録を読み返すと、それ以上によく引っかかるのが「促す」「声かけした」「介助した」「対応した」「見守った」といった、書き手自身の行為を表す言葉です。便利で使いやすい分、具体的に何をしたのかがその言葉だけでは伝わりません。
このページは、そうした「介助の行為」を表す言葉を、具体的な記録の文章に言い換えるための考え方と、食事の場面での例文をまとめたものです。
言い換えの正解は施設や記録様式によって異なります。ここでの例はひな形としてお使いください。
言い換えの軸は「行為の名前」から「行為の中身」へ
「促す」「声かけした」がなぜ引っかかるかというと、行為に名前だけを付けて、中身を書かずに済ませてしまえるからです。ここに 「何を・どのように」 を足すだけで、記録は後から読んでも状況が分かるものになります。
- ✗ 声かけし、食事を促した。
- ○ 「お茶からどうぞ」と声をかけ、スプーンを手元に置いたところ、自力で摂取を再開された。
やることは、行為の名前を、実際に行った動作とその後の反応に分解するだけです。以下の例文も、この考え方で言い換えています。
介助の行為を表す言葉の言い換え例
「促す」を言い換える
- 食事を促した → 「お食事の時間です」と声をかけ、椅子を引いて着席を促した。
- 摂取を促した → 口元にスプーンを近づけ、開口を待ってから促した。
- 完食を促した → 残りの量を伝えたうえで、時間を区切って摂取を促した。
「声かけした」を言い換える
- 声かけした(内容が分からない) → 「今日は魚ですよ」と献立を伝える声かけを行った。
- 都度声かけした → 一口ごとに「ゆっくりどうぞ」と声をかけ、ペースを調整した。
- 励ます声かけをした → 「あと少しですね」と声をかけ、摂取の継続を後押しした。
「見守った」を言い換える
- 見守った(何を見ていたか分からない) → むせの有無を確認しながら、自力摂取の様子を見守った。
- 安全に配慮し見守った → 姿勢が崩れないか確認しながら、食事の様子を見守った。
- 様子を見守った → 途中で手が止まる場面がないか、食事全体を通して見守った。
「介助した」を言い換える(介助の量が伝わるように)
- 介助した(全介助か一部介助か不明) → スプーンを口元まで運ぶ全介助で摂取された。
- 一部介助した → 主食は自力で摂取され、副食のみ介助でお渡しした。
- 見守りに近い介助をした → 手を添える程度の介助で、大部分は自力で摂取された。
「誘導する」「勧める」を言い換える
- 食事に誘導した → 「お食事にしましょう」と声をかけ、食堂まで一緒に移動した。
- 摂取を勧めた → 好みの副食から先に勧めたところ、食事が進んだ。
- 水分摂取を勧めた → 食事の合間に水分を勧め、都度摂取を確認した。
漠然とした「対応した」を言い換える
- むせに対応した → とろみを付けて対応し、その後のむせは見られなかった。
- 体調に対応した → 食欲がない様子だったため、量を調整して対応した。
- 状況に応じて対応した → 姿勢が崩れていたため、クッションで姿勢を整えて対応した。
迷いをその場で解消したい場面には
ここまでの言い換えは、意識すれば誰でもできます。ただ、記録を書くたびに「促す」を毎回具体的な文章に直すのは、それはそれで負担です。
食事の様子で気づいたこと(むせ・詰め込み・拒否 など)と、行った対応にチェックを入れると、行為が具体的に伝わる記録の文章が自動で組み上がるツールを作っています。「何をしたか思い出せない」を防ぐための道具です。個人で月あたり数百円から使えます。
※ このページの言い換え例は無料でご自由にお使いいただけます。ツールはあくまで「毎回考えるのが面倒」という方向けの選択肢です。
よくある質問
Q. 「促す」「声かけした」は使ってはいけない言葉ですか?
使ってはいけないわけではありません。ただ、その言葉だけで終わると、後から読んだ人(他のスタッフや、報告を受ける看護師など)に具体的な状況が伝わりにくくなります。行為の中身を一言添えることをおすすめします。
Q. 毎回すべての行為を詳しく書く必要がありますか?
記録の分量や施設のルールによります。特に変化があった場面(むせが増えた、摂取量が落ちたなど)では具体的に書き、いつも通りの場面は簡潔にする、といった使い分けが現実的です。