記録を書いていて、「召し上がった」と書くべきか、それとも「摂取された」でいいのか、手が止まったことはありませんか。
利用者さんには普段、「お食事を召し上がってくださいね」と丁寧に声をかけているのに、いざ記録用紙やシステムの入力欄を前にすると、その言葉遣いをそのまま書いていいのか迷う——ということがあります。丁寧に書こうとするほど文章が長くなり、逆に事実が伝わりにくくなることもあります。
このページでは、食事の場面を中心に、介護記録の敬語について考え方と言い換え例を整理しました。
敬語の使い分けで押さえておきたい1つの考え方
冒頭に1点だけ。介護記録は「利用者さんへの声かけ」ではなく、「後で読む人(他職種・家族・監査など)に事実を伝える文章」です。声かけの場面ではやわらかい敬語を使っていても、記録の文章では、事実が短く伝わることを優先して言葉を選び直す、という整理をすると迷いにくくなります。
- 声かけ:「お食事を召し上がってくださいね」
- 記録:「昼食を摂取された。」「昼食を全量摂取。」
「召し上がる」のような尊敬語は、声かけの言葉としては自然ですが、記録の文章に置くと、誰から誰への敬意なのかがぼやけやすく、文章も長くなりがちです。記録では「摂取する」「介助する」「見られる」のように、事実を短く伝える言葉に置き換える、という考え方が目安になります。
ただし、これは唯一の正解ではありません。施設や記録様式によって文体の慣行が違い、「です・ます」で統一しているところもあれば、「である」体で統一しているところもあります。自分の施設で決まっている文体に合わせることが前提で、以下は迷ったときの目安として使ってください。
場面別・敬語の言い換え例
食事の開始・終了
- 迷いやすい書き方:「食事を召し上がられました。」
- 言い換え:「食事を摂取された。」「昼食(全量)を摂取。」
- 「召し上がられる」のような二重敬語は記録では避け、シンプルな言い切りにすると読みやすくなります。
介助の場面
- 迷いやすい書き方:「スプーンでお食事を召し上がっていただいた。」
- 言い換え:「スプーンで介助しながら摂取を促した。」
- 「〜していただいた」という言い方は、介助する側とされる側の関係を強調しすぎることがあります。記録では「〜した」「〜を促した」という事実の記述に寄せると読みやすくなります。
食事量・様子の記録
- 迷いやすい書き方:「あまり召し上がられませんでした。」
- 言い換え:「摂取量が普段より少なかった。」「主食3割・副食5割程度の摂取だった。」
- 「あまり」「少し」のような曖昧な言葉も、量や割合に置き換えると、後で読んだ人に伝わりやすくなります。
食事を始めない・拒否の場面
- 迷いやすい書き方:「お食事を拒否されました。」
- 言い換え:「食事の提供時に食べようとされない様子が見られた。」
- 「拒否」という言葉自体は記録でもよく使われますが、繰り返し使うと強い印象になりやすいため、様子の描写と混ぜて使うと読みやすくなります。
むせ・様子への配慮
- 迷いやすい書き方:「お茶でむせていらっしゃいました。」
- 言い換え:「お茶でむせが見られた。とろみを付けて対応した。」
- 「いらっしゃる」のような尊敬語は日常会話では自然ですが、記録では主語を利用者さんに固定した客観的な描写に寄せると、事実・対応・結果の流れが作りやすくなります。
「です・ます」か「である」か
施設によって、記録全体を「です・ます」(丁寧語)で統一しているところと、「である」(常体)で統一しているところがあります。どちらが正しいというものではなく、施設・様式で決まっている文体に合わせるのが基本です。
迷いやすいのは、丁寧語で書いているときに「召し上がる」のような尊敬語まで足してしまうケースです。丁寧語(です・ます)と尊敬語(召し上がる・いらっしゃる、等)は別のレイヤーの敬語なので、「摂取されました」「介助いたしました」のように丁寧語だけで揃えると、記録としては読みやすくなります。
- です・ます体の例:「昼食を摂取されました。むせは見られませんでした。」
- である体の例:「昼食を摂取。むせは見られず。」
どちらの文体でも、事実(何が起きたか)・対応(どう対応したか)・結果(どうなったか)の3つを短くつなげる、という組み立て方は変わりません。
例文を「探す」のをやめたい方へ
ここまで読んで、「言い換えの都度、こうやって考えるのも手間だな」と感じたかもしれません。
実は、そのためのツールを作っています。食事の様子で気づいたこと(むせ・詰め込み・こぼれ など)にチェックを入れると、その場面に合った記録の文章が自動で組み上がる、というものです。文体(です・ます/である)や長さも選べるので、施設の記録の書き方に合わせて調整できます。
言い換えを都度考える作業そのものを、丸ごと省くための道具です。個人で月あたり数百円から使えます。
※ このページの言い換え例は無料でご自由にお使いいただけます。ツールはあくまで「毎回考えるのが面倒」という方向けの選択肢です。
よくある質問
Q. 「である」体で書いている記録に、部分的に敬語を使ってもいいですか?
基準は施設のルールに合わせることです。特に決まりがない場合は、記録全体で文体を統一すると読みやすくなります。
Q. 「〜された」という言い方は使ってはいけませんか?
「摂取された」のような受け身表現自体は記録でよく使われる言い回しです。避けたいのは、そこに「召し上がられる」のような尊敬語を重ねてしまう二重敬語です。
Q. 食事以外の場面(入浴・排泄など)の敬語の例文はありますか?
このページは食事・食事介助の場面に絞っています。食事の記録を、より具体的に扱うことを目的としているためです。