介護記録を書くのが苦手、という声をよく見かけます。
パソコンに向かっても何から書けばいいか分からず、結局「特に変わりなし」で終わらせてしまう。他の職員の記録を見ると具体的に書けているのに、自分の記録は薄い気がする。そうやって記録そのものが苦手になっていく流れは、珍しくないようです。
このページでは、文章力の話はいったん脇に置いて、「書く前に何を決めておくと楽になるか」を食事の場面を例に整理します。
書けないのは、文章力ではなく「見るポイント」が決まっていないから
記録が苦手だと感じる人の多くは、「食事の様子を見てから、何を書くか考える」という順番になっています。見ている間は漠然と様子を眺めているだけで、後から「さて、何を書こう」となり、手が止まる。
これを逆にして、**「何を見るかを先に決めてから、食事の様子を見る」**順番に変えると、書くことがかなり絞られます。
- ✗ とりあえず食事の様子を見て、終わってから記録のことを考える
- ○ 「ペース」「むせの有無」「摂取量」の3点だけ見ると決めてから、食事に入る
見るポイントを3つ程度に絞っておけば、記録に書く材料はその場でほぼ揃います。あとは、見たこと(事実)・した対応・その結果を順につなげるだけです。
場面別・最低限これだけ書けば足りる例
「全部きちんと書かなければ」と思うと手が止まるので、まずは短くてよい例から見てください。
特に変化がなかった日
- 昼食は普段どおりのペースで、むせなく全量摂取された。
- 食事の様子に変わりなく、介助なく摂取された。
変化がない日は、「変わりなかった」という事実だけで十分な記録です。無理に言葉を足す必要はありません。
むせや摂取量の変化があった日
- 昼食中、お茶でむせが見られたため、とろみを付けて提供した。その後はむせなく摂取された。
- 摂取量が普段より少なく、主食3割・副食5割程度だった。次回の様子を観察する。
「見たこと」→「したこと」→「どうなったか」の3つを順番に並べるだけで、文章として成立します。
どう書けばいいか判断がつかなかった日
- 食事中の様子にやや気になる点があったため、詳しい状況は看護師へ口頭で申し送った。
- 普段と異なる様子が見られたが、原因がはっきりしないため、次回の食事の様子を注意して観察することとした。
判断に迷うときは、無理に原因まで書こうとしなくて構いません。「気になったので、確認・相談した」という事実だけでも、記録としては成立します。
新人・担当になったばかりで、普段の様子が分からない日
- 本日が初回の担当のため、普段のペースとの比較はできないが、むせなく摂取されている様子だった。
- 普段の様子を把握していないため、今回観察した内容を記録し、次回以降の比較材料とする。
「比較できない」こと自体を正直に書いておくと、後から読む人にも状況が伝わります。無理に「普段どおり」と決めつけない方が、記録としては誠実です。
書く前の準備を1つだけ
毎回ゼロから考えるのがしんどい場合は、見るポイントのメモを手元に置いておく方法もあります。「ペース」「むせ」「摂取量」「口腔内の残留」など、自分がよく見る項目を3〜5個書き出しておき、食事の前にそれを見てから介助に入る。それだけで、記録に書く材料を集めやすくなります。
例文を「探す」のをやめたい方へ
ここまで読んで、「それでも毎回考えるのは負担だな」と感じたかもしれません。
実は、そのためのツールを作っています。食事の様子で気づいたこと(むせ・詰め込み・こぼれ など)にチェックを入れると、その場面に合った記録の文章が自動で組み上がる、というものです。文体(です・ます/である)や長さも選べるので、施設の記録の書き方に合わせて調整できます。
見るポイントを決める手間も、文章にする手間も省きたい方向けの選択肢です。個人で月あたり数百円から使えます。
※ このページの例文は無料でご自由にお使いいただけます。ツールはあくまで「毎回考えるのが面倒」という方向けの選択肢です。
よくある質問
Q. 記録が苦手なことを理由に、担当から外してもらった方がいいですか?
多くの場合、記録が苦手なのは書き方の手順の問題であって、介助そのものの能力とは別の話です。見るポイントを先に決める方法を試してから判断することをおすすめします。
Q. 新人に記録を担当させるとき、何に気をつければいいですか?
「普段の様子と比較できない」のは当然のことなので、無理に比較させず、その日観察した内容をそのまま記録させることが、負担を減らすポイントになります。