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介護記録の良い例・悪い例|主観と事実を分けて書くコツ(食事の場面で)

書いた記録を読み返して、「これ、主観が混じっていないだろうか」と手が止まること、ありませんか。

「不穏だった」「機嫌が悪かった」——書いているときは自然な言葉でも、後から見直すと、見た事実なのか、自分がそう感じただけなのかがあいまいになっていることがあります。かといって、迷うたびに書き直していては時間が足りません。

このページは、そういうときに立ち止まって使う「分け方」と、食事の場面での良い例・悪い例をまとめたものです。

主観と事実、何が違うのか

介護記録で「主観」と呼ばれるのは、多くの場合、見た・聞いた・測ったことではなく、そこから自分が受け取った印象や評価です。

  • 主観寄り:不穏、機嫌が悪い、やる気がない、頑固
  • 事実寄り:大きな声を出した、スプーンを置いて顔を背けた、声かけに返事がなかった

事実寄りの書き方に共通するのは、誰が読んでも同じ場面を思い浮かべられることです。「不穏だった」では人によって想像する場面が違いますが、「大きな声を出した」であれば、読んだ人はほぼ同じ行動を思い浮かべられます。

主観の言葉を全部消す必要はありません。ただし、そのまま置くのではなく、見た行動を先に書き、そこから受け取った印象や対応の理由をあとに添える順番にすると、記録としての強さが増します。

  • ✗ 食事に対して意欲がなかった。
  • ○ 声かけをしても食器に手を伸ばさなかった。開始から10分ほど経過し、食欲が低下している様子がうかがえたため、時間をおいて再度お声かけした。

説明体と逐語体を使い分ける

もう1つ、記録の書き方で迷いやすいのが「説明体」と「逐語体」の使い分けです。

  • 説明体:状況を地の文で客観的に描写する書き方。「〜の様子が見られた」「〜を行った」
  • 逐語体:本人の発言をそのまま「」でくくって残す書き方。言い換えず、聞こえたとおりに書く

本人の発言そのものに意味がある場面(拒否の理由、体調の訴えなど)は逐語体で残し、行動や様子を伝える場面は説明体でまとめる、という使い分けが基本になります。両方を混ぜて書くと、どこまでが本人の言葉でどこからが記録者の描写かがわかりにくくなるため、発言部分だけ「」でくくるのが目安です。

  • ✗ 食べたくないと拒否的だった。
  • ○ 「今はいらない」と発言があった。声かけの上、時間をおいて再度提供したところ、摂取された。

食事の場面で比べる、良い例・悪い例

むせ・飲み込み

  • ✗ むせがひどくて心配だった。
  • ○ 水分摂取時にむせが数回見られた。とろみを付けて対応したところ、その後はむせなく摂取された。

食べこぼし

  • ✗ だらしなくこぼしていた。
  • ○ 口の端から食べ物がこぼれる様子が見られた。介助スプーンの量を調整し、声かけしながら対応した。

詰め込み・早食い

  • ✗ 焦って食べていて危なかった。
  • ○ 口に食べ物を詰め込む様子が見られたため、一度手を止めてもらい、飲み込みを確認してから次の一口を促した。

注意散漫・集中が続かない

  • ✗ 落ち着きがなく、食事に集中していなかった。
  • ○ 周囲の話し声のたびに視線が逸れ、咀嚼が止まる場面が見られた。声かけで注意を戻しながら介助した。

姿勢

  • ✗ 姿勢が崩れていて見ていられなかった。
  • ○ 円背があり、食事中に上体が傾く様子が見られた。足底・左右・顎の姿勢を確認し、クッションで調整した。

認知症の症状がある場面

  • ✗ 分かっていない様子で困った。
  • ○ 食事を目の前にしても手が出ない様子が見られた。献立を口頭で説明したところ、食事を始められた。

口の中に食べ物が残る

  • ✗ ちゃんと飲み込めていなかった。
  • ○ 飲み込んだ後も頬の内側に食べ物が残る様子が見られた。追加で飲み込みを促し、食後に口腔内を確認した。

食事中にゴロゴロした声になる場面

  • ✗ 苦しそうで見ていて怖かった。
  • ○ 食事中、喉に食物が残っているような声が聞かれた。複数回嚥下を促し、様子を確認しながら介助した。

迷ったときの3つのチェック

書き終えた文を見直すとき、次の3点を確認すると、主観が混じっていないかを機械的にチェックできます。

  1. 見た・聞いた・測ったことだけで書けているか。 「不穏」「意欲がない」のような評価語がそのまま残っていないか
  2. 本人の発言は「」でくくってあるか。 くくらずに地の文へ混ぜていないか
  3. 対応と結果が添えてあるか。 事実だけで終わると記録が薄く見えるため、行った対応とその後の様子までを一続きにする

この3点は、毎回文章を組み立て直すのではなく、書いたあとに見直す形で使うほうが負担が少なくなります。

主観か事実か、判断する手間を省きたい方へ

ここまで読んで、「毎回この判断をするのも手間だな」と感じたかもしれません。

実は、そのためのツールを作っています。食事の様子で気づいたこと(むせ・詰め込み・こぼれ など)にチェックを入れると、事実の描写を軸にした記録の文章が自動で組み上がる、というものです。文体(です・ます/である)や長さも選べるので、施設の記録の書き方に合わせて調整できます。

主観と事実を毎回自分で仕分ける作業を、丸ごと省くための道具です。個人で月あたり数百円から使えます。

※ このページの例文は無料でご自由にお使いいただけます。ツールはあくまで「毎回の判断が面倒」という方向けの選択肢です。

よくある質問

Q. 主観の言葉を使ったら、その記録は無効になりますか?
無効になるということではありません。ただし、見直したときに事実と評価が区別しにくくなるため、評価語を使う場合は、その前に見た行動を添えておくことをおすすめします。

Q. 逐語体はどこまで正確に書く必要がありますか?
発言の要点が変わらない範囲であれば問題ないとされることが多いですが、判断に迷う場合は施設内のルールを確認するか、上長に相談することを検討してください。