他の職員が書いた記録や申し送りを読んでいて、知らない略語や専門用語が出てきて止まったこと、ありませんか。
「複数回嚥下」「交互嚥下」「ハッフィング」——意味が分からないまま読み飛ばすと、引き継ぎで大事な部分を落としてしまうことがあります。逆に自分が書く側になったとき、略語をそのまま使っていいのか、フルで書いたほうがいいのか迷う場面もあります。
このページは、食事・嚥下の記録でよく出てくる言葉を集めて、意味と使い方の目安をまとめたものです。必要な場面を探して、該当する言葉を確認するのに使ってください。
略語を書くときの、たった1つの目安
用語集に入る前に、1点だけ。
略語や専門用語は、その場にいる全員が同じ意味で読めるかどうかで使い分けるのが目安になります。同じ職種・同じフロアのスタッフ同士なら略語で十分でも、他職種に渡る申し送りや家族向けの説明では、フルの言葉に言い換えたほうが伝わりやすくなります。
- 職員間の記録・申し送り → 略語・専門用語のままでよい場面が多い
- 他職種・他施設への報告、家族への説明 → 一度フルの言葉に言い換えることを検討する
この区別を意識しておくと、以下の用語もそのまま使うか言い換えるかの判断がしやすくなります。
嚥下の対応でよく使う言葉
複数回嚥下
一口に対して、飲み込む動作を複数回繰り返すこと。ノドに食べ物が残っている様子が見られたときの対応として使われる言葉です。
交互嚥下
性質の違う食べ物(たとえば主食と水分)を交互に飲み込むこと。ノドに残った食べ物を次の一口で押し流す考え方で使われます。
息こらえ嚥下
飲み込む前後で呼吸を止める嚥下の方法。むせや、ノドに食べ物が残る様子が見られたときの対応の一つとして記録に出てきます。
おでこ体操
おでこに手を当てて下に押しながら、おへそを覗き込むように力を入れる体操。嚥下にかかわる筋力への対応として使われる言葉です。
ハッフィング
痰や、ノドに残ったものを出すための強い呼気の方法。咳嗽訓練と並んで出てくることが多い言葉です。
咳嗽訓練
咳を出す力を保つ・高めるための訓練。痰の量が多い様子や、むせへの対応として記録に出てきます。
口腔・摂食にかかわる訓練の言葉
顎トレーニング
噛む力や、詰め込み・いつまでも噛んでいる様子への対応として使われる言葉。噛む筋力に関わる訓練を指します。
舌トレーニング
舌の動きや筋力に関わる訓練。食べ物が口に残る様子への対応として出てきます。
頬トレーニング
頬の筋力に関わる訓練。食べ物が口に残る様子への対応の一つです。
口唇トレーニング
口唇の閉じに関わる訓練。食べ物が口からこぼれる様子への対応として記録に出てきます。
唾液腺マッサージ
唾液腺のあたりをマッサージすること。口腔の乾燥への対応として使われます。
水分・食形態にかかわる言葉
トロミ(とろみ)
飲み物や汁物にとろみをつけること。飲み物でむせる様子が見られたときに、濃度の見直しとあわせて記録に出てきます。
食形態(しょくけいたい)
食事の形(きざみ・ペースト・一口大など)の段階を指す言葉。ペースが合わない・噛めない・こぼれるなど、さまざまな場面で「食形態の検討」という対応とあわせて使われます。
全身状態・姿勢にかかわる言葉
IN/OUTの確認
水分や食事の摂取量(IN)と、排出量(OUT)を確認すること。脱水が考えられる場面の対応として記録に出てきます。
バイタルチェック
血圧・脈拍などの確認。低血糖や低血圧が考えられる場面の対応として使われます。
円背(えんぱい)
背中が丸くなっている姿勢の状態。姿勢の崩れが摂取に影響している様子を記録するときに出てくる言葉です。
環境調整
音や人の出入りなど、周囲の環境を整えること。注意が散漫になる様子や、認知症の症状がある場面の対応として記録に出てきます。
用語を「調べる」のをやめたい方へ
ここまで読んで、「結局毎回この種の言葉を調べることになる」と感じたかもしれません。
実は、そのためのツールを作っています。食事の様子で気づいたこと(むせ・詰め込み・こぼれ など)にチェックを入れると、原因と対策の候補があらかじめ対応づけられた状態で、記録の文章が自動で組み上がる、というものです。用語の意味を調べながら文章を組み立てる手間を省くための道具です。個人で月あたり数百円から使えます。
※ この用語集の内容は無料でご自由にお使いいただけます。ツールはあくまで「毎回調べて組み立てるのが面倒」という方向けの選択肢です。
よくある質問
Q. ここに載っていない略語に出会ったときは、どうすればいいですか?
施設や職種によって使われる略語には幅があります。意味が確信できないまま記録に使うと、読む人によって受け取り方が変わってしまうことがあるため、先輩職員や担当医・看護師に確認してから使うことを検討してください。
Q. 記録には略語を使わないほうがいいのでしょうか?
一概には言えません。同じ職場内で意味が共有されている略語であれば、記録の時間短縮につながります。一方で、他職種への報告や家族への説明では、フルの言葉に言い換えたほうが誤解を避けやすくなります。場面に応じて使い分けることを検討してください。